しその葉

祖母の詩

祖母は毎年欠かさず「らっきょう」「白菜漬け」「梅干し」を作っていました。小さい頃の私は好き嫌いが多い子供で、祖母の手作りの漬け込んだものはどれ一つとして口にできませんでした。

祖母が漬けたものには縁のない私でしたが、時期が来ると嬉しそうに赤しそを新聞紙にくるんで抱えていた祖母の姿。うっすらと今も記憶に残っています。

しその葉

しその葉は

畑の隅に忘れられ

言葉少なくつつましく

ほめそやされず生い立ちぬ

   

やがて花も見ぬままつみ取られ

もまれ、もまれて、しぼられぬ

哀れその形なけれど

ひとくれのしそ、水に放ちし魚のごと

生々と赤く拡がり沈みゆく

ゆるやかに実をば包み

優しく静かに色染めて

くれないのかぐわしき梅とはなりぬ

しそありて梅

梅ありてしそ

白きびんの中ひそやかにより添いて

しそ、くれないに美しきかな

かなしきばかり美しきかな

孫のあとがき

祖母のうちへ遊びに行くのは大好きでしたが、台所へ立ち入るのは好きではありませんでした。それほど広くない台所にもかかわらず、床の半分の面積を、瓶漬けにされた梅干しやらラッキョウやらがギチギチと並べられておりました。

十代後半から梅干しだけは食べられるようになりましたが、その時は遠く離れて暮らしていたので祖母の漬けた梅を食べることは願い叶わず。私の父と姉は祖母の漬けたいろんなものが大好きで、よく二人で白ご飯とともに頬張っていたのを覚えています。

漬けたいろんなものは口にできなかったけど、祖母が作ったきゃらぶきの佃煮とやせうま(大分の郷土料理)は、今でもまだ食べたくなる味の思い出です。

現在、我が家の食卓にあがるは梅チューブ。丁寧に漬け込んだものなどなにもなく、とにかく腹を満たすため、つぎはぎだらけの食事を両親に出しています。

自分にもう少し余裕と体力があれば、ちゃんとした手作りの食事をさせてあげられるのに…と思うだけで、本日も何もできずに力尽きて宅配弁当に頼った私です。

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