赤とんぼ|若き日の祖母が紡いだ愛ある言葉と胸の内側

祖母の詩

赤とんぼの季節をひとり待つ
私の大切な人が
どうか赤とんぼになって帰って来ますようにと
ばあちゃんから教えてもらった通り
私も赤とんぼへの夢を追う

赤とんぼ

お星さまになった人が年に一度
赤とんぼになって帰ってくるのよ
だから取らずにおきましょう

ばあちゃんが私に言ったように
私も孫にそういう
まだ死の意味を知らない幼い目に
うすいとんぼの羽は美しく
はなしてやった二本の指が
すいすいと空を切る
赤とんぼへの夢を追う

遠い遠い日が来て
いつか孫が私の年になり
不幸にして我が子を失ったら
あなたも切ない気持ちで
そう言うのかもしれません

「だから放してあげよう」と

孫のあとがき

小さい頃から「ご先祖様たちがとんぼになって帰って来る」と教えられていた。それは祖母から、時に母から。

いつの頃か忘れたけれど、祖母が「ああ帰ってきたのね、おいでおいで」と、とんぼの群れに手を差し伸べていた。その手に一匹のとんぼがすいっと乗ったのを覚えている。祖母は二人の子供を亡くしている。産まれてすぐに見送った子と、成人して間もなく罹った病に打ち勝てなかった子と。その二人に向けられた深い愛情に、とんぼが応えてくれたのだろう。

そのような光景を見てしまったので、50代になった今でも、そしてこれからも一生「ご先祖さまたちはとんぼになって帰って来る」と私は思い続ける。

そのとんぼの群れに、今年から私の母が加わる。思いもよらなかった急な入院から始まった、辛い数か月と続いた日々。その時間をどうする事も出来なかった娘の元へ、果たして母がすいっと現れてくれるかどうかは自信がないけれど、おかあさんとばあちゃんと、そしてご先祖さまたちとみな一緒になって帰ってきてくれるのを、私はひとり待つとしよう。

自分で家族を作らなかったから、この先誰にもとんぼの事は話せない。今までは母と一緒に待ちわびていたとんぼの群れ。これからはひとりでひっそり待ち焦がれる。

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