養鶏場にて

祖母の詩

同じような顔が目白押しに並んで

コツコツ コツコツと

餌をつついている養鶏場

何と孤独な騒々しさであらう

心と心のふれ合いのない

都会の雑踏の中の靴音のように

  

時折言葉にならぬ声をあげて

一斉にけたたましく叫んでいるが

あれは怒号か歌声なのか

それとも泣いているのか

天に向かって何かを訴えているのか

人と人、車と車がひしめく中で

迷子になった魂が

金切り声をあげているような

  

明るく澄んだ空が下りて来て

生みたての卵を抱いていても

サルビアの花の真紅の色を

おそい秋が盗みに来ても

死んだ仲間がほうり出されていても

一心に食べている無表情な鶏達

四階建の竹と板の狭い世界は

まるで何処かの団地のようだ

賑やかで限りなく淋しくて

  

お前も私も田舎育ち

つぶらな目に涙が溢れはしないか

太陽がいっぱいの黒い土と

草の香が恋しくはないか

コツコツと何をつついている

つついてもつついても

つきない夢か哀しみか

今日も鶏達よ  

   

孫のあとがき

私の知らない祖母がこの詩の中にいる・・そんな感じを受けました。

物静かで朗らかで、そして世も人も恨むことなく過ごしてきたと思っていた祖母の、何とも言いようのない寂しさを見つけてしまった感じがします。

いつの時代の、どの場所でこの詩を書いたのか。その時に見えたその風景はただの感想か、それとも自身の人生を重ね合わせて書いたのか・・。

ふわりと柔らかな顔をした遺影で佇んでいる祖母の歩んできた人生。本人から聞いてみたかったな。

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