その花は

祖母の詩

祖母は無類の花好きで、育てるのも愛でるのもとても好きな人でした。植物の名前を「知らない」と書かれてあるこの詩。

いまであればGoogleレンズやネットでいかようにでも調べられるのになぁ。

その花は

南の海で台風の子供が次々に生まれ

秋がしのび足でやって来る頃

花は桃色から薄紫に着がえてしまう

その木の名は知らず

  

移りかわる季節の流れのように

何時の間にか老いた私のように

ゆっくりとそしてすばやく

知らぬ間に沈んだ色に衣がえする

  

あじさいは雨に優しく

ひまわりは太陽に輝き

その花は珊瑚礁の風がつくる造花か

花が風を呼ぶのか

風が花を咲かせるのか

激しい嵐の中でゆらゆらゆれて

木一面に匂うばかりの花のかんざし

  

やがて

無惨にも枝は折れ葉はちぎれ

それでも尚

この季節に誰かと約束したのか

短い命を燃やして

台風が忘れていった青空に

生きた証を鮮やかに刻みこむ花

  

孫のあとがき

祖母がこの詩をいつの時代に書いたのかは不明です。ただ前後に書かれた内容からするに、55年以上前の詩だと考えられます。

私が今暮らしている近所の道沿いに、もしかしたらこの詩に書かれているのはこの木かなぁ・・と思われる木が生えています。

この間その道を通った時、偶然にもこの木は何という名前の木だろうかと思いました。今度その道を通る時、まだ花が咲いていたら写真に収めて調べてみようと思います。

私が次に通るまで、どうか花を落とさずにいてくれますように。

コメント

タイトルとURLをコピーしました