【孫のあとがき】髪を結う

祖母の詩

 

白髪を染めることをやめてから、ショートヘアーを選んだ母。真っ白の頭になる事を夢見ていたけど、何故だか黒髪が増えてきて。いつまでたっても白髪になりやしない・・と、ぶつぶつと呟きながらもショートヘアーを謳歌していた。

祖母の髪形は、私が生まれる前から変わっていない。長い髪を三つ編みにして、くるりと首元でお団子を作っていた。私はその髪を束ねる姿が大好きで、よく「もう一度作ってみて」とねだっていた事を覚えている。

あなたも大きくなったらやってみてちょうだいと言われたが、私はとても不器用で、三つ編みはおろか髪をポニーテールにすることも容易にできない手先に育った。私は、若いころからずっと母より先行くショートヘアーだった。

私が好きだった祖母のお団子ヘアーは、祖母が認知症になり、身支度を自分でできなくなった時に母がバッサリ切ってしまった。

それは問答無用だった。三つ編みになっていた部分を裁縫ばさみでちょん切り、そのあとバリカンで刈っていた。母、凄いことするなあと眺めていたが、まあその時はそれしか正解がなかった。

祖母は可愛くなった。無理やりだったがベリーショートに変身し、認知症になった残りの人生ニコニコしていた。ずっと大切に編んでいた三つ編みを切られた時の罵詈雑言は凄いものだったが、とても愛くるしいベリーショートの祖母となった。

いま私の髪の毛は長い。あれほどショートヘアーが好きでたまらなかった私は、スタイリングがめんどくさくなり、伸ばしっぱなしで生きている。祖母が以前やっていたように、三つ編みを作ってみようと頑張ってみたが、やはり手先が器用でないため整わない。

髪の短い娘があなたの元へ旅立った。あなたの娘はこの世で沢山頑張った。もう以前のように結えるほどの長さのない髪になってしまったが、その頭を撫でてやってはくれまいか。そしていつか孫があなたの元へたどり着いた時、私の髪を結ってはくれまいか。

そう願いつつ、あなたから引き継いだおりんを鳴らす。

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