その花は

祖母の詩

南の海で台風の子供が次々に生まれ

秋がしのび足でやって来る頃

花は桃色から薄紫に着がえてしまう

その木の名は知らず

  

移りかわる季節の流れのように

何時の間にか老いた私のように

ゆっくりとそしてすばやく

知らぬ間に沈んだ色に衣がえする

  

あじさいは雨に優しく

ひまわりは太陽に輝き

その花は珊瑚礁の風がつくる造花か

花が風を呼ぶのか

風が花を咲かせるのか

激しい嵐の中でゆらゆらゆれて

木一面に匂うばかりの花のかんざし

  

やがて

無惨にも枝は折れ葉はちぎれ

それでも尚

この季節に誰かと約束したのか

短い命を燃やして

台風が忘れていった青空に

生きた証を鮮やかに刻みこむ花

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