私には一度も会った事のない叔父がふたりいます。私がこの世に生まれるずいぶんと前に、その与えられた命を全うできなかったふたりの叔父がいます。
この詩は、祖母がそのうちのひとりを思って書いた詩です。
菜の花
永い年月の流れは
悲しみだけを押し流して
今日は彼岸
春が投げてくれた黄色い花をあなたにあげよう
秋に生まれて
名つけ祝の日に死んだあの子は
ほんの少しお乳をのんだだけで
ほんの少し空気を吸っただけで
手の届かない処へ行ってしまった
今日は彼岸
春を知らないあなたに
優しいかわいい菜の花をあげよう
私に残してくれた
小さな思い出のような花を
孫のあとがき
まさるちゃん
会った事のない叔父の名前です。生まれてすぐに天国に行ってしまったので、私はまさるちゃんの顔も声も知りません。でもほんのわずかの間だったとはいえ、まさるちゃんがこの世に生まれ愛おしい存在であった事。あなたの母親(祖母)とあなたの姉(私の母)が話す昔話のその内容で、私にはまさるちゃんという叔父がいたと小さいころから知っていましたよ。
まさるちゃん
あなたの母親は、ずーっとずーっとあなたの事を覚えていました。だから私もあなたの事を今も忘れずにいます。一度も顔を合わせた事のないあなたですが、私と同じ年月生きられなかったあなたですが、あなたはれっきとした私の叔父さんです。
きっと今、雲の上で母子楽しく過ごしている事でしょう。それは嬉しく思えるのですが、孫の私は寂しいのです。
祖母の命日が訪れるたび、20年ほどたった今でもほんの少しだけ寂しくなるのです。
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