家近くの道にて

私の胸の内

ある日の道端
狭い車道のその脇を
ひとりのおばあさんが歩いていました
笑顔で前のめりでよちよちと
バス停に向かっているその人は
私の知っている人に似ていました
それは私のおかあさんでした

ああもう少しだけ早く気づいていれば
あともう少し自分が大人であれば
まだ今でも母が好きなあんぱんを
父に内緒ではんぶんこ
母と娘で笑い頬張れていたのかも

いつまでもあなたの子でいたかった
私の誰にも言えない後悔

あなたを年寄りにしていればよかった
少しだけ年寄りにしてしまえばよかった

そう涙を流しても
今はどこにも戻れない

まっすぐな瞳の人でした
すっと背筋の伸びた人でした
しっかりとした気持ちの人でした
それが私のおかあさんでした

初盆すぎても
まだごめんなさいと手を合わせる
今までのありがとうを
どうにか口に出したくても
あの日のおばあさんの残像が
まだ陽炎のように浮かんで残る

誰も知らない私の無念
それは私がこの世を去る時まで
私は身に纏わせ生きてゆく

  

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