おかあさんへ【3】

私の胸の内

おかあさん
あれから一年が過ぎました

一年前の今日を振り返っても
去年の今頃の風景に目を凝らしても
どこにもあなたが見えません

このリビングで二人並んでした話
一緒に食べたホットケーキの味
同じ家にいるにもかかわらず
一階と二階でLINEをやり取りした時間

それらは書き出せば
なんとか「過去の出来事」として
羅列はできるのだけれど
その風景は
とんと浮かんでこなくなりました

一生懸命思い出そうとしても
あなたとわたしの記憶のカタチが
脳みそのどこにも見えなくなりました

おかあさん
一周忌はひゅうっとやって来ました

命日までにあれこれしなくちゃと
頭では一生懸命考えていたけど
ひゅうっとやってきた時間に
私はついていく事ままならず
家の中はどこもかしこも
おかあさんがいた時のまんまです

だけどおかあさんの感触は
どこを見渡して探してみても
この手のひらに伝わってくる何かは
見つからないしわからない

おかあさん
あなたがいなくなってから
父がアルツハイマー型認知症であると
白黒つきました

おかあさん
あなたがいなくなってから
私の身体に色んな不具合が生じてます

おかあさん
あなたがいなくなってから
犬が更に老いてきました

だけど心配ご無用です

たぶんなんとかやっていきます
たぶんそんな気がします

みんなみんな
あなたがそばで心配しなくていいように
どこかで誰かが采配振るって
くれていたのでしょう
あなたがいなくなったのを
見計らったように
色んな何かがドタバタとやってきます

そんな毎日を
おとうさんと私と犬は
なんとか「どっこいしょ」と力合わせて
根拠のないカラ元気で過ごしています

だから心配ご無用です

おかあさん
もうおとうさんの妻だとか
わたしのおかあさんだとか
わんちゃんのばあばだとか
そんなお役目責任は全部放り出して
子供に戻って過ごしてください

父と私と犬が
そちらで全員集合するその日まで
生まれた時の名字に戻って
うんと子供になっていてください

またみんなが揃う日まで
あなたはそちらで
わたしたちはこちらで
それぞれ楽しく暮らしましょう

おかあさん
あなたと元気に過ごした最後の日々は
どう思い出してもカタチになりません

ただそれと当時に
絶望感も悲壮感も私を襲ってくることは
今のところないので
やはりどこかで誰かが采配振るって
私を踏ん張らせてくれているのでしょう

おかあさん
とはいえやはり会いたいです
できれば元に戻りたい
あなたの横に座りたい
あなたの背中におでこをつけたい
あなたの手を握りたい

  

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