アマリリス

祖母の詩

うちのアマリリスは
何故か少々野暮ったい
色の黒い田舎の娘さんが
眞赤なセーターを着ているような
でも人の事など気にしない
無邪気なところがかわいくて
ついこの花の前にしゃがみこんでしまう

隣のアマリリスは色白で
すっきりしているのに
どうしてお前は・・・
なんていいますまい
となりはとなり
うちはうち

子供の頃
新しもの好きの父が
蓄音機を買ってきた
大きなラッパをのぞきこんで
どんな小人が歌っているのかなと
不思議に思ったことがあった
そのラッパに似たアマリリス

アマリリスのラッパの中から
昔の歌が流れてくる
そして遠い日の若く美しい
母が出てくる

白い前かけをして
匂いのいいビンヅケをつけた
丸まげ姿の母
どんな望をかけて
私を育てたのだろうか


母は遠くはなれて老い
私も何時の間にか四十をいくつか過ぎて
いまだ貧しく二年半を病んでいる

(結核にかかった頃)

  

コメント

タイトルとURLをコピーしました