夕暮れの中を

祖母の詩

遥かな山脈の尾根をこえて

この時刻

こうして帰るしか道がない

幾つもの無言の隊列が

霧のようにひつそりと

草深い小道をぬらして帰って来る

  

暮れなずむ海の果てから

こうして帰るしか道がない

数知れぬ嗚咽の隊列が

音もなく白い砂を踏んで

藻の香を素足に滲ませ帰って来る

  

母国のニオイをかぎに

故郷の思い出を拾いに

ビルマ国境で眠っている弟よ

夕暮れの中を

霧になって潮になって

あなたも帰っておいで

あなたも帰っておいで

(正治さんへ)

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