菜の花|若き日の祖母が紡いだ愛ある言葉と胸の内側

祖母の詩

祖母と母から受け継いだ仏壇に
小さくてかわいい
享年の彫り込まれていない位牌
姿かたちは見えずとも
ずっとそこにかわいく座る
私の叔父、まさるちゃん

菜の花

永い年月の流れは
悲しみだけを押し流して

今日は彼岸
春が投げてくれた黄色い花を
あなたにあげよう

秋に生まれて
名つけ祝の日に死んだあの子は
ほんの少しお乳をのんだだけで
ほんの少し空気を吸っただけで
手の届かない処へ行ってしまった

今日は彼岸
春を知らないあなたに
優しいかわいい菜の花をあげよう
私に残してくれた
小さな思い出のような花を

 

  

孫のあとがき

会った事のない叔父。母の兄弟姉妹で、唯一私が顔を知らない叔父。

まさるちゃん

祖母が大切に口にしていた名前。小さい頃から眺めていた仏壇に、まさるちゃんはちょこんと座っていた。享年のない位牌。それが祖母の大切なまさるちゃんだ。

祖母の口から呼ばれるまさるちゃんは、まるでこの世にいるようだった。亡くなった人としてではなく、間違いなくこの世に生まれ立った人として、私は祖母からまさるちゃんの事を聞いていた。

だから私もまさるちゃんと呼ぶ。

まさるちゃん。まさるちゃんのねえちゃんが去年そちらに行きました。まさるちゃんのねえちゃんは、私の母として沢山頑張ってくれたので、しばらくおかあさんを独り占めさせてあげてくださいね。

まさるちゃん。これからはあなたのねえちゃんに代わって、朝と夕のお線香は姪の私が引き受けます。祖母の分も祖父の分も。あなたの分ともう一人の叔父の分と。そして私の母のために。

なので、まだ授かった命を懸命に生きているあなたの姉と弟を守ってやってくださいね。

戦後、間もなくして生まれた叔父まさる。あなたがもし生きていたならば、私はあなたとどんな言葉を交わしただろうか。もしあなたがまだ元気だったならば、あなたともLINEで話しをしたのかなあ。

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