おかあさん
あれから一年が過ぎました
一年前の今日を振返っても
去年の今頃の風景に目を凝らしても
どこにもあなたが見えません
ふと記憶がなくなりました
このリビングで二人並んでした話
一緒に食べたホットケーキの味
同じ家にいるにもかかわらず
一階と二階でLINEをやり取りした時間
一生懸命思い返しても
なんにも浮かんでこなくなりました
おかあさん
一周忌はひゅうっとやって来ました
命日までにあれこれしなくちゃと
頭では一生懸命考えていたけど
私の身体は
ひゅうっとやってきた時間に
ついていく事ままならず
家の中はどこもかしこも
おかあさんがいた時のままです
おかあさん
あなたがいなくなってから
父がアルツハイマー型認知症であると
白黒つきました
おかあさん
あなたがいなくなってから
私の身体に色んな不具合が生じてます
おかあさん
あなたがいなくなってから
犬が更に老いてきました
だけど心配ご無用です
たぶんなんとかやっていきます
たぶんそんな気がします
みんなみんな
あなたがそばで心配しなくていいように
どこかで誰かが采配振るって
くれていたのでしょう
あなたがいなくなったのを
見計らったように
色んな何かがドタバタとやってきます
そんな毎日を
おとうさんと私と犬は
なんとか「どっこいしょ」と力合わせて
根拠のないカラ元気で過ごしています
だから心配ご無用です
おかあさん
もうおとうさんの妻だとか
わたしのおかあさんだとか
わんちゃんのばあばだとか
そんなお役目責任は全部放り出して
子供に戻って過ごしてください
父と私と犬が
そちらで全員集合するその日まで
生まれた時の名前でいてください
またみんなが揃う日まで
あなたはそちらで
わたしたちはこちらで
それぞれ楽しく暮らしましょう
おかあさん
あなたと元気に過ごした最後の日々は
思い出せないでいるけれど
同時に辛いとか悲しいとか
そいういう気持ちも出てこないので
やはりどこかで誰かが采配振るって
私を踏ん張らせてくれているのでしょう
おかあさん
とはいえやはり会いたいです
できれば元に戻りたい



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