おかあさんへ【2】

私の胸の内

おとうさんがね、ある日私に謝ってきたんだよ。

ごめんね。とんとこちゃんごめんね。おとうさんが何回も夜中にトイレに行くから、あんた寝れないだろ?起きてしまうだろ?おとうさん、一生懸命そーっと音がしないようにおしっこに行ってるつもりだけど、ごめんね。うるさくない?

びっくりしたよ。あなたが生きていた頃は、一度も私に気遣うことなく夜中トイレに行っていたおとうさんがだよ?たぶんお母さんがいなくなったから、おとうさんは一生懸命「お父さん」として私と生きようとしてくれているのかな。

アルツハイマー型認知症になった人は、色んな事を手放しながら進んで行く人なんだと思っていたけど、逆に父は保護者としての責任感がムクムクと湧いて出てきたみたいな感じでさ。

夜中のトイレの件に限らず、たまに一生懸命「保護者」としての責任感を口に出してくるんだよ。娘、もうすでに50代後半に突入しているというのにね。

私のことを保護者として守ろうとしてくれる。今まで子供たちの事に関してはおかあさんに頼り切りと任せきりの父だったのに、ここぞとばかりに父親になろうと奮起している。アルツハイマー型認知症になったとて父親なんだねえ。

嬉しいけど少しだけ辛い。

おとうさんが「父親」として奮起しているのは、たぶんおかあさんがいなくなったせいと、アルツハイマー型認知症の脳がそう言わせていることが聞いてとれるから。それがわかるから嬉しいけど辛い。まあでも少しだけだけどね、辛いのは。今のところ、この件含めて笑いながらやりこなせてると思う。

おかあさん、気が付いてるよね?初盆の少し前から、おとうさんがおかあさんに手を合わせに来る回数が増えたこと。でも、そこにあなたへの愛はないからね。お供え物のあんぱんをチェックしに来ているだけだからね。そこもアルツハイマー型認知症だ、許せ母。

コモのパン
今回のお供えはコモのパン

「賞味期限が10月17日だから、まだ食べられないよ」と伝えたら、シュンとして自分の部屋に戻っていきました。毎回仏前に来たら、悲しそうに賞味期限の日付を指でなぞって擦っていくのよ。おかあさんがいなくなった絶望感より、あんぱんの賞味期限の長いことに全力で絶望してます。

まあでもそれくらいのほうがいいのかなあと、娘の私は思います。

9月になりました。おとうさんの部屋のカレンダー。あなたの月命日の日付に、蛍光ペンでグリグリに丸を付けていました。一生懸命覚えています。

たまに「まだ半年か・・」と、おとうさんはあなたがこの世を去ってからの期間をつぶやくけど、あなたがこの世を去った時から、もうそろそろ1年が経とうとしている。早いねぇ。

で、一周忌どうしようか。本人に質問するのもいかがなもんかと思うけど、もし私の体力と気力が回復していなかったら、私の般若心経だけでも許してもらえるかなあ。チャッカマン壊していった坊主より、私の方が断然ありがたいお経を唱えられそうな気がする。

今日はイオンネットスーパーに注文した品が届くのを待つ日です。荷物が届けられるその前に、髪だけ洗おうと思います。今日もなんとか頑張ります。

本日の近況報告は以上です。

じゃあまたね

  

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