退化・進化、それとも変化
母がこの世を去ってから
父の放つ言葉の紡ぎに初めてを聞くことが増えた
私の父がこんなに饒舌だったとは
人前でも家族の前でも言葉少ないこの人が
福福と朗らかな笑顔で
突然ヒバリの生態を説き始めた
「あそこにいるヒバリはね・・」と父が言う
わが家のどこにヒバリがいるのだろうと
小首を傾げて聞いてみた
ああなるほどねお父さん
あそこにいる鳥のことかな
でもそれは本当にヒバリなの?
更に私の首は傾く
そんな娘に気づくことなく
父は嬉々としてヒバリの凄さを伝えてくる
アルツハイマー型認知症も悪くない
そう思えたある日のこと
今は「悪くない」と思えるそれで
もしかしたら数日後
その気持ちは呆気なく覆されるかもしれないけれど
とりあえずその日は楽しい日だった
父が説くヒバリの生態が
果たして本当かどうかそんなことはどうでもよい
父が私に話してくれる
その事に大いなる意義があり
そしてなにより大切
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